このページでは、「竜の尻尾を噛む二十日鼠」21話から30話までのネタバレあらすじをまとめました。
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「竜の尻尾を噛む二十日鼠」21話ネタバレ
「話がある」と声をかけられたアリーズは、その言葉に心のどこかでふわりと嬉しさを感じていました。
けれど、カールが持ち出したのは、近々開催される狩猟大会の話題。
「陛下に直接言えない貴族たちが、あれこれ文句ばかりで……」
カールはぶつぶつと不満をこぼします。
それを聞いていたアリーズは、ふと笑いながら言いました。
「では、前夜祭。あなた、私をエスコートしてくださらない？」
突然の申し出に、カールは目を見開きます。
彼には、“許可なく女性と私的に会うこと”を禁じる規則がある――でも。
「本当の気持ちは？」とアリーズが静かに尋ねると、
カールは少し戸惑いながらも、しっかりと答えました。
「……エスコートさせていただきたいです」
その言葉に、アリーズの頬が少しだけゆるみます。
一方その頃、前夜祭に向かうラリンは、姉がまだ来ていないことに不安を覚えていました。
さらに、慣れない靴に足元を取られ、ふらりとよろけてしまいます。
その様子を見た陛下がすかさず駆け寄り、何の迷いもなく彼女をひょいと抱き上げます。
「私が連れて行こう」
そのまま“お姫様抱っこ”で会場に現れた陛下とラリンの姿に、場は一瞬ざわつきました。
中でもロゼシアは、怒りの感情をさらに燃え上がらせます。
託宣の儀が始まると、何かを悟ったように席を立ち、苛立ちを隠さずにその場を離れていきます。
その途中でロゼシアの目に入ったのは、アリーズの姿。
「あなたさえ、あの時あんな証言をしなければ……」
ロゼシアの怒りの矛先は、今やアリーズへと向かっていました。
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「竜の尻尾を噛む二十日鼠」22話ネタバレ
託宣の結果を受けて、苛立ちを募らせたロゼシアは、アリーズに声をかけます。
「――託宣のこと、どう思ってるの？」
まるで試すような視線に、アリーズは慎重に言葉を選ぼうとしますが、即答できずに黙ってしまいます。
その沈黙に怒ったロゼシアは、いきなりアリーズの頬を打ちました。
「言葉に詰まるなんて、やっぱりあなた……！」
怒りにまかせて再び手を振り上げたその瞬間――
「やめろ！」
カールが素早く間に入り、アリーズをかばいます。
ロゼシアの前に立ちはだかった彼は、アリーズをそっと引き寄せ、会場から連れ出していきました。
会場を離れた後も、アリーズは静かに落ち込んだ様子で俯いています。
そんな彼女の姿に、カールは「自分は守れなかった」と胸を痛め、不甲斐なさを噛みしめていました。
けれど、やがてアリーズがほんの少し笑みを浮かべ、「ひとりになりたい」と言います。
それでもカールはその言葉に首を振り、「少しだけ散歩しませんか」と優しく誘いました。
歩きながら、カールは改めてお礼を伝えます。
「アリーズ様がいなければ、結婚式の準備なんて到底間に合いませんでした。本当に、ありがとうございました」
談笑の中で気持ちも和らぎ、アリーズの表情も次第に明るくなっていきます。
けれどその中で、彼女はふと疑問を覚えます――
（この人、本当に貴族のことを知らなすぎる……）
不思議そうにカールを見つめながらも、アリーズは笑って言いました。
「今度、一緒に出かけましょうか。貴族の世界、少しずつ教えてあげます」
そんな穏やかなやり取りの中、ふたりの背後から忍び寄るように近づいてきた影がひとつ。
アリーズの肩越しに現れたその男は、皮肉な笑みを浮かべながら言いました。
「おやおや、こんなところで逢い引きとは……お似合いですね、平民と伯爵令嬢」
そこにいたのは、護衛騎士・ディボシオ。
空気が一瞬で緊張に染まっていく中、カールの表情が静かに険しくなっていきます――。
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「竜の尻尾を噛む二十日鼠」23話ネタバレ
アリーズに声をかけてきた男――それは、3年前に彼女との縁談を申し込んで断られた過去を持つ、護衛騎士・ディボシオでした。
「お久しぶりですね、アリーズ様」
そう言うと、ディボシオは一方的にアリーズの手を取り、その甲にキスを落とします。
アリーズはその行動に明らかに引き、ちらりとカールの方へ視線を向け、「助けてくれないかな」と心の中で思います。
けれど、ディボシオは悪びれもせず、ニヤリと笑って問いかけました。
「それにしても、なぜこんな平民と一緒に？」
その言葉に、カールはうつむきながら何も言えずにいます。
「噂なんて気にしません。私は、自分の目で見て決めますから」
アリーズはそう言って、カールの腕をしっかりと取ります。
だが、カールは自信なさげに目を伏せながら呟きました。
「……僕より、彼の方が相応しいと思います」
ディボシオはそれを聞いてさらに強気になり、しつこくアリーズに食い下がります。
「やはり、あなたに釣り合うのは僕ですよ。あんな孤児ではなく――」
その言葉を遮るように、アリーズははっきりと言いました。
「私が、カールにエスコートをお願いしたんです。あなたではなく、彼に」
その一言で、ディボシオは顔を歪めながらも退散していきました。
気まずい空気が流れる中、アリーズは静かに言います。
「失望しましたよ。どうして、そんなにも自分を下に見るのですか？」
そして、言葉を続けます。
「あなたが陛下に拾われた孤児で、貴族でないことくらい……知っています」
驚いたようにカールが顔を上げると、アリーズはほんの少しだけ頬を赤らめながらも、まっすぐに見つめ返しました。
「でもそれが何です？ 身分なんか、私がなんとかします。……あなたのこと、絶対に夫にしますから」
その瞳には、揺るぎない意志が宿っていました。
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「竜の尻尾を噛む二十日鼠」24話ネタバレ
前夜祭の後、ラリンはそっと陛下に言いました。
「お姉様を叩いた皇女のこと、私は……嫌いです」
その声には怒りというよりも、悔しさと悲しみが滲んでいました。
「私、自分の心を殺すのも、体の痛みに耐えるのも慣れているつもりでした。でも……お姉様が叩かれた時は、胸が引き裂かれるようでした」
そう語るラリンの目から、ぽろりと涙がこぼれます。
「何もできなくて、悔しいんです」
その涙を前にして、陛下はもう放っておくことなどできませんでした。
「……行こう。アリーズのところへ」
そう言ってラリンを連れ出し、アリーズのもとを訪れます。
姉の無事な様子を目にしたラリンは、ホッとしたように微笑み、ようやく安心した表情で部屋へ戻っていきました。
その去り際、泣き腫らした目をした妹を見て、アリーズの胸に温かなものが広がります。
（……心配してくれたんだ）
その一方で、アリーズはふと陛下に問いかけました。
「ラリン様の“側室”としての公称、正式にはもう決めてあるのですか？」
その問いに、陛下は一瞬言葉に詰まり、考えていなかったことに気づかされます。
アリーズはそんな彼の様子を見て、軽く肩をすくめました。
「……でも、今気づけて良かった。間に合いますね」
そして真っ直ぐに陛下を見て、続けます。
「では、“今”お考えの公称、教えていただけますか？」
アリーズの静かな一言に、陛下の表情がわずかに動き――物語は次の局面へと進もうとしていました。
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「竜の尻尾を噛む二十日鼠」25話ネタバレ
姉の元気そうな様子を見て安心したラリンは、ベッドに身を横たえ、ひと息ついていました。
一方で、アリーズから公称について問われたことが頭を離れず、陛下はぼんやりと考え込んでいました。
すると、布団の中からラリンが優しく声をかけます。
「ここで一緒に休みませんか？」
その言葉に陛下は微笑みながら、ベッドの端に腰を下ろします。
部屋には淡い灯りだけがともり、静かな空気が流れていました。
ラリンは、薄明かりの中でも美しく輝く陛下の瞳と、彼の纏うコーヒーの香りに包まれながら、まどろむような声で話し始めます。
「……私、結婚なんて縁がないと思ってたんです」
かつての自分の行く末――
宿で男の相手をしながら病で死ぬか、妾として誰かに買われるのが運命だと、そう思っていたと語るラリン。
「でも……思っていたより、ずっと、ずっといい待遇で。
それに、陛下のこと、好きになってしまったから……好きな人と結婚できるなんて、まるで夢みたいです」
そう微笑みながらも、ラリンはふと不安をのぞかせます。
「……私が死ぬとき、陛下はそばにいてくれますか？」
その問いに、陛下はゆっくりと頷き、穏やかに、しかし確かに言葉を返しました。
「ラリン、側室はお前ひとりだ。
……そして、私にとっても、お前は“ひとり”だけだ」
その言葉に、ラリンはそっと目を閉じ、胸の奥にあった不安が、静かに溶けていくのを感じていました。
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「竜の尻尾を噛む二十日鼠」26話ネタバレ
託宣の結果が「未来の皇后」と出たことを知ったドベル・カヤルンは、静かに何かを企てていました。
その目には、壮大で不穏な計画の気配が漂っています。
一方、ラリンに与えられた公称――「蝶（パピヨン）」をアリーズが預かることになり、
その責任の重さとともに、彼女の中にある疑念がふと顔を覗かせました。
――陛下は、本当に妹を守りきれるのか？
そんな想いを抱えたまま、アリーズはラリンと向き合います。
「……今なら、まだ引き返せるわ。
本当に陛下と結婚してもいいの？ 後悔しない？」
ラリンは少し驚いたように目を瞬き、けれどはっきりと答えました。
「陛下は悪い人じゃないって……私、信じてる。
それに、側室になる時も、覚悟は決めてた。……死ぬつもりで、ね」
その言葉に、アリーズは唇を噛みます。
これまで何人もの側室候補の令嬢が命を落としてきた。
それが皇女たちの仕業であることも、アリーズには察しがついていました。
自分の妹が、皇太后の目を引きつける囮として使われている――
それが真実なのだとしたら、恐ろしくてたまらない。
せめて、陛下が本当に妹を守るという“確信”があれば、心から祝福できるのに。
そんな暗い顔をしていたアリーズに、元気よく声をかけたのはサージェとラージェ。
「私たち、ラリンを絶対に守ります！ たとえ命をかけても！」
その言葉に、アリーズはふっと微笑み、少しだけ肩の力を抜きました。
――信じるしかない。陛下を。そして、妹の選んだ未来を。
そう心に決めたアリーズは、静かに立ち上がり、
その手でラリンをしっかりと導きながら、結婚式の場へと歩みを進めていきました。
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「竜の尻尾を噛む二十日鼠」27話ネタバレ
式場に到着したラリンは、アリーズとカールに優しく導かれながら、ゆっくりと教会の中へと足を踏み入れます。
重々しい扉が静かに開き、光が差し込む先には、凛と立つ陛下の姿。
ラリンは一歩一歩、彼のもとへと歩を進めながら、これまでの歩みを胸の内に思い返していました。
――あの路地裏で、私は“死ぬこと”を選べなかった。
どうせ死ぬなら、自分で死に場所を選ぼうと。
そして、人生で一番美しいものを見てから死のうと思って、辿り着いたのが……あのサルタトール家だった。
アリーズの身代わりとして後宮に入り、“ラリン”という名前をもらい、見上げるほどの立派な宮殿に住むようになった。
それまで知らなかった綺麗なもの、美しいもの。
そして、友人と呼べる人たちに囲まれて過ごす日々――
それがどれほど温かく、楽しく、幸せなことだったかを、夢のように思い返す。
教会の空間に来賓の貴族たちのざわめきがこだまし、ラリンの耳に陰口がはっきりと届いてくる。
「平民が皇帝の側室とは……」
「こんな女が皇室の名を汚す……」
その言葉の重みに、一瞬、足が重くなり――
陛下の前で、ラリンはほんのわずかにつまづいてしまう。
けれど、すぐに顔を上げ、胸を張る。
宣誓の言葉は、練習通りに覚えている。
言葉ひとつひとつをかみしめるように、ラリンは丁寧に語り切りました。
そして――
「よくできた」と微笑む陛下の優しい声に、ラリンは涙を堪えながらも微笑み返し、
そっと、陛下に“誓いのキス”を捧げます。
その瞬間、ラリンの心の中には静かな誓いが刻まれていました。
――どんなことがあっても、私は一生、陛下についていく。
その想いを胸に、ラリンはようやく“自分の人生”を歩き始めたのでした。
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「竜の尻尾を噛む二十日鼠」28話ネタバレ
式のあとに開かれた盛大な舞踏会。
煌びやかな音楽が流れる中、ラリンは緊張で身体を強張らせていました。
けれど、そっと寄り添ったアリーズが微笑みながら言います。
「その靴、あなたに合わせて作ったの。踊れるはずよ」
そう言われて足元を見たラリンは、ふっと笑みを浮かべました。
アリーズの気遣いが、心の緊張を少しずつほどいてくれたのです。
そんな中、華やかな来賓の波を割るようにして現れたのは、皇女・ロゼシア。
ラリンの目の前に立つと、仮面のような笑顔で言いました。
「結婚、おめでとう。心から祝福するわ」
その口調には皮肉が滲んでいて、続く言葉はやはり――
「でも、こんな貧相な娘が陛下の隣に立つなんて、不釣り合いもいいところね」
周囲が息をのむ中、ロゼシアはさらに、ひとつの箱を差し出しました。
中には、蛇の皮で仕立てられた、煌めく真珠付きのピンヒール。
明らかに嫌がらせの意図を含んだ贈り物。
アリーズがどう応対すべきか迷っていると、ラリンはその手を取って――
「ありがとうございます。とても……綺麗です」
と、素直に受け取りました。
アリーズが驚く中、ラリンは凛とした瞳で言います。
「お姉様を傷つけた人に、負けたくありませんから。私は、私らしく立ちます」
そう言って、ラリンはその靴に足を通し、舞踏会の中心へと歩き出します。
そして、もう一度ロゼシアの前に立ち、きっぱりと告げました。
「ダンスの相手は、陛下以外に必要ありません。――私は、他の誰の手も取りません」
その毅然とした態度に、ロゼシアの顔に苛立ちが浮かびます。
けれどその時――
「ずいぶんと楽しそうじゃない？」
涼やかな声とともに、場に現れたのは皇太后。
その場の空気が一瞬で凍りつく中、ラリンは気を引き締めて背筋を伸ばしました。
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